
今、さまざまなエネルギーをめぐって私たちの未来がどう変わるのかという転換期となっています。
今回ご紹介するバイオマス燃料は、再生可能エネルギーの仲間のひとつであり、今注目されているエネルギーです。
それでは最初にバイオマス燃料の基本情報を学んでいきましょう!
目次
バイオマス燃料とは?簡単に解説
バイオマス燃料とは、動植物から生まれた再生可能エネルギーのひとつで、「Bio(バイオ)」と量を示す「Mass」を組み合わせた言葉です。
バイオマス燃料の原料となるものは例えば、
- 間伐材
- コーヒーかすなどの廃棄物
- 動植物のあぶら
- 農産物、海藻
などが挙げられます。
これらのバイオマスを利用して電気を作り出すことをバイオマス発電と呼びます。
自然界でつくられるエネルギー
バイオマス燃料は自然界でつくられる資源をエネルギー源とするため、上手に使えば永続的に電気を供給することができます。
バイオマスの一番の特徴は、形のない太陽のエネルギーや水のエネルギーを、物質的な植物という形に閉じ込めておける点です。
わかりやすくイラストを交えて解説しましょう。
植物は光合成を行いますが、太陽エネルギーを利用して二酸化炭素と水を合成し、ブドウ糖、脂肪、たんぱく質、でんぷんをつくりだしています。
このように太陽光エネルギーを物質として留めておける唯一の存在は、陸上と水中の植物と、植物プランクトンだけです。
昔の生活はバイオマス燃料が主流だった!
電気やガス、灯油が利用されるもっと昔、人間は自然界のエネルギーを頼りに生活をしてきました。
例えば、時代劇や大河ドラマでもよく登場するちょうちんの灯り。
ちょうちんの燃料はアブラナ科の植物からとれる植物油や、蜂の巣からとれるミツロウ、虫の分泌物からとれる虫ろうなどを利用していました。
このように私たち人間の祖先は身近で得られる自然界のエネルギーを借りながら、あらゆる知恵を使って生活を豊かにしてきたのです。
バイオマス燃料と他の燃料との違い
バイオ燃料とは、動植物などの生物由来の資源から作られる燃料の総称です。バイオマス燃料は、その中でも特に再生可能エネルギーのひとつとして注目されています。
地球上に存在する資源(太陽光や風力、地熱)など自然界に常に存在し、枯渇することなく利用できるエネルギー
化石燃料(石炭・石油・天然ガスなど)は、動植物の死骸が長い年月をかけて地中で化石となったもので、限りある資源です。使い続けるといずれなくなってしまいます。
その一方でバイオマスは自然界でつくられる生物由来のエネルギーです。持続的に生産・利用できるため適切に管理することで長く電気や熱を生み出し続けることができます。
【併せて読みたい】バイオマスプラスチックとは?種類やメリット・デメリット、個人にできる取組も
バイオ燃料とは?簡単に解説
バイオ燃料とは、植物や動物などの生物資源(バイオマス)を原料として作られる燃料の総称です。従来の石油や石炭といった化石燃料とは異なり、再生可能な資源を活用しているため、枯渇の心配がなく、持続可能なエネルギーとして注目されています。
バイオ燃料は何に使う?原料は?
バイオ燃料は、主に発電や自動車、バス、トラックなどの車両燃料、産業用ボイラー、暖房など幅広い用途で利用されています。発電所では石炭や天然ガスの代替としてバイオマス発電が行われ、電気の安定供給に貢献しています。
また、自動車やバスでは、ガソリンや軽油に代わる燃料としてバイオエタノールやバイオディーゼルが使われ、二酸化炭素(CO₂)排出削減に役立っています。
原料は多岐にわたり、トウモロコシやサトウキビなどの農作物、木材や木くず、食品廃棄物、廃食用油、家畜のふん尿などが挙げられます。
これらの原料は再生可能で、地域資源の有効活用や廃棄物削減にもつながっています。
バイオ燃料の作り方
バイオ燃料の製造方法は、原料や目的の燃料によって異なります。
バイオエタノールの場合、トウモロコシやサトウキビなどの糖質・でんぷん質原料を発酵させてアルコールを生成し、精製して燃料用エタノールを得ます。
バイオディーゼルは、廃食用油や植物油を化学反応(トランスエステル化)によってメチルエステルに変換し、ディーゼルエンジンで利用できる燃料にします。
また、木材や農業残さなどの固体バイオマスは、乾燥・粉砕・圧縮してペレットやチップに加工し、ボイラーや発電所で燃焼されます。
これらの工程は、環境負荷を抑えつつ効率的にエネルギーを生み出すことを目指しています。
バイオ燃料を扱っている企業
バイオ燃料の分野では、国内外の多くの企業が研究開発や事業化を進めています。
日本では、ENEOSや出光興産などの大手エネルギー企業がバイオ燃料の製造・供給に力を入れています。
また、伊藤忠商事や三菱商事などの総合商社も、バイオマス発電やバイオ燃料の輸入・流通に取り組んでいます。
海外では、アメリカのPOETやADM、ブラジルのPetrobrasなどが大規模なバイオエタノール生産を行っています。
自動車メーカーでは、トヨタやホンダ、フォルクスワーゲンなどがバイオ燃料対応車の開発や普及に積極的です。
今後も技術革新や国際的な連携が進み、バイオ燃料市場は拡大していくと期待されています。
バイオマス燃料の種類
では、バイオマス燃料にはどのような種類があるのか見ていきましょう。
バイオマス燃料は大きく分けると、
- 未利用系バイオマスを利用
- 廃棄物系バイオマスを利用
- 資源作物系バイオマスを利用
の3つに分けられます。
未利用系バイオマス | 廃棄物系バイオマス | 資源作物系バイオマス | |
---|---|---|---|
例 | 廃材・工場残材など | 動物の排泄物・生ごみ・下水 など | みつろう・さとうきび など |
利用例 | ・直接燃焼し暖房や給湯などに利用 | ・飼料の原料として活用・発酵させ発電に利用 | ガゾリンに混ぜることで二酸化炭素排出量が減少する |
未利用系バイオマスを利用(木質ペレット・薪など)
バイオマスエネルギーは身近にたくさん存在していますが、実は上手に使われていません。これを有効活用するのが未利用系バイオマスです。
例えば以下のような種類が挙げられます。
薪
薪は間伐材や木材をそのまま燃やす方法です。薪ストーブや薪ボイラーとして使われます。
木質ペレット
間伐材や木材を加工した際に出る木屑やおがくず、バークという木の皮を細粉して棒状に固形化したものを木質ペレットといいます。
ペレットストーブ、ボイラー、猫トイレの砂がわりとして使われます。木材の特徴として消臭効果があるため、におい消しになるのです。
木炭
木材を焼いた後に残る木炭を燃料として使えます。火力が強く煙が出ないことからアウトドアで人気の高い燃料です。
また消臭効果があるため冷蔵庫やトイレの消臭剤として使われることがあります。
▶︎関連記事:「木質バイオマスとは?メリット・デメリット、活用事例と課題・問題点を徹底紹介!」
廃棄物系バイオマスを利用(動物の排泄物・食品工場の廃棄油など)
廃棄系バイオマスとは活用されず有償で処理されがちなものですが、バイオマス燃料となる立派な資源です。
メタンガス
廃棄系バイオマスのひとつに動物の排せつ物があり、それらを利用した燃料をバイオガス燃料と呼びます。
バイオガスの主成分はメタンで、炭酸ガスなどさまざまな気体が含まれています。
そのまま河川に捨てると海の汚染につながってしまうと敬遠されがちなメタンガスですが、メタンが発酵することで燃料として活用できます。
ドイツやデンマークでは畜産農場にメタンガス発生装置を設置。そこから地域に送電し、都市ガスとして利用されています。農場でも発電による熱でお湯として使われています。
バイオディーゼル燃料
食品工場から出る廃棄油や家庭の使用済み油も廃棄物系バイオマスのひとつ。バイオディーゼル燃料と呼ばれるものです。
軽油を利用されることが多いトラックや重機、農業トラクターの代替燃料として使用することができます。
バイオディーゼル燃料のメリットは二酸化炭素排出がゼロであること、燃費や走行性能も軽油と比較しても劣っていないこと、生分解性があり地球に優しい燃料であることなどです。
資源作物系バイオマスを利用(サトウキビやミツロウなど)
ミツバチの巣から採取したミツロウ、植物の体の中や種子などに溜めこまれたあぶらなどの資源作物系バイオマスを利用したものをバイオエタノールと呼び、新たな燃料用エネルギーとして注目されています。
バイオエタノール
バイオエタノールの活用方法はガソリンに混ぜて使うことが一般的で、使用することで二酸化炭素排出量が減り、石油使用量も抑えられるメリットがあります。
また、バイオエタノールの新たな活用方法として消毒用エタノールの開発にも注目が集まっています。
岐阜県産業技術センター研究報告(※1)によれば、木からしぼった精油が防菌効果があることからデオドラント製品開発に貢献すると言われています。
バイオマス燃料のメリット
では、これらのバイオマス燃料を使うメリットを3つあげてみましょう。
くりかえし使えるエネルギー源
バイオマス燃料は地球環境でつくられる資源を原料とするため、地球を大切にする限りくりかえし使えるエネルギー源です。
安定して使える
太陽光発電や風力発電の課題として挙げられるのは発電量が季節や時間帯によって一定ではないことです。
太陽光は20年や30年など長期的な部分で見ると太陽光発電は安定しているので大きな問題ではないのですが、一方でバイオマス燃料は季節や時間帯に左右されることがないので安定型の自然エネルギーといえます。
また、安定した電力を供給するためには複数の発電方法を組み合わせて使うことが求められています。この考えをエネルギーミックスといいます。
地球環境にやさしい
3つめは二酸化炭素を増やさない地球環境にやさしいエネルギーであることです。
これは現在深刻な問題となっている気候変動をストップさせるための重要な要素となります。
バイオマス燃料が気候変動対策のひとつの手段となる理由をもう少し踏み込んで見ていきましょう。
バイオマス燃料のデメリット
バイオマス燃料のデメリットはどんなものがるのでしょうか。
コストが高い
バイオマス燃料は、原料の収集や運搬、加工に多くのコストがかかる点が大きな課題です。
バイオマス資源は広範囲に分散して存在するため、効率的に集めるためには多くの手間と費用が必要です。また、木材を乾燥・チップ化するなど、燃料化の工程ごとに追加のコストが発生します。
さらに、燃料費が発電コストの大部分を占めており、太陽光や風力発電と比べて経済的な競争力が劣る場合があります。
これらの理由から、バイオマス発電の普及にはコスト削減の工夫が不可欠です。
燃料の安定供給が難しい
バイオマス燃料の原料は、農作物残さや木材など多様ですが、安定的に大量供給するのは容易ではありません。
森林資源の利用には法律や計画による制限があり、国内資源だけでは需要を賄いきれず、海外からの輸入に頼るケースも増えています。輸入に依存すると、国際的な需給バランスや価格変動、輸送コストの増加といったリスクも高まります。
こうした供給の不安定さが、バイオマス燃料の拡大を妨げる要因となっています。
環境への影響・生態系破壊のリスク
バイオマス燃料は再生可能エネルギーとされていますが、原料の生産や燃料の栽培・収集・輸送の過程で温室効果ガスが排出される場合があります。
特に、森林伐採や土地利用の変化が伴うと、生態系の破壊や生物多様性の損失、炭素の貯蔵量減少といった深刻な環境問題を引き起こすリスクがあります。
持続可能な利用が求められますが、現状では十分な管理が行き届いていないケースも指摘されています。
バイオマス燃料が環境にやさしい理由

バイオマス燃料が地球環境にやさしい理由はCO2を増やさないことです。
ここでおそらく生じる疑問が一点。
「ものを燃やすんだから二酸化炭素が排出されるでしょ?どうして環境にやさしいの?」
もちろんバイオマス燃料を燃やすことで二酸化炭素を排出させますが、次に説明するカーボンニュートラルという考えに沿ってみると理論上、地球上の二酸化炭素量は増えないことになります。
図を交えて詳しくみていきましょう。
二酸化炭素プラスマイナスゼロ!カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルを訳すと、「炭素が中立である」という意味です。
バイオマス燃料として加工される前の植物は、もともと光合成によって空気中の二酸化炭素を吸収し酸素を作り出します。
燃焼する際に排出される二酸化炭素は、植物がすでに吸収した分であり、元に戻っただけということになります。二酸化炭素がお引越ししているだけと考えるとわかりやすいですね。
このように、バイオマス燃料は排出量と吸収量が同じとなり、理論的には二酸化炭素がプラスマイナスゼロであるため、循環型社会の実現や、気候変動の原因のひとつである地球温暖化対策ができるのです。
バイオマス燃料の見直しでエネルギー耕作などの新しい産業が生まれた
また、近年ではバイオマス燃料が見直されたことで新しい産業も生まれています。例えば農産業では、バイオマス燃料となる木を栽培するエネルギー耕作という新しい試みを始めました。
栽培される植物は成長スピードの速いヤナギ、ポプラの木を使われなくなった畑で3年から5年育て、刈り取りバイオマス燃料に加工します。
5年が速いの?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、スギは35年から50年、ヒノキで45年から60年かかるので断然サイクルが短くて済みますよね。。
日本では農業従事者の高齢化によって使われなくなった田畑が増えています。
そういう筆者も、祖父の他界で使われなくなった土地をオーガニックファームとして再生し始めたうちのひとりなので、エネルギー耕作についてはとてもよく理解できます。
よく、使われなくなった土地に「荒れ地」という言葉が用いられますが、実はそのような場所ほどこれらの産業の適性が高いとも考えられています。その理由は、5年ほど放置された農地は農薬や化学物質の影響を受けていないため、むしろ優良な農地と呼ばれる方が適しているためです。
バイオマス燃料の活用事例
最近では日本でもバイオマス燃料は注目を集めています。日本木質バイオマスエネルギー協会(※3)によると、平成29年3月末時点では、491ヶ所 で、約1,200万kWの発電容量となっており、実は私たちの身近なところでも広まりを見せています。
そこでここでは、バイオマス燃料を活用した事例をピックアップしたので、実際にバイオマス燃料を見てみたい!体験してみたい!と興味がある方はぜひチェックしてみてください。
バイオマス燃料の暖かさに触れられる『ペレットストーブ』
バイオマス燃料を実際に体験することで、いかに環境にも人にも優しい燃料なのか理解することができます。
私が数年前に在籍していた企業では、バイオマス燃料であるペレットを作る工作機械を開発し、社内にペレットストーブが設置されていたのです。
ペレットストーブに出会った人みな声を揃えて言うのが、
- どの暖房器具よりも暖かい
- 空気が悪くならない
- 乾燥しない
- においがない
- 暖炉内でゆらゆらと燃える火を見ていると落ち着く
ということでした。
ただ環境にいいだけでなく、人体にも、脳にも、仕事のパフォーマンス向上にもおすすめの燃料だということを五感で理解しました。
今となってはその仕事環境がいかに特別なものだったのか知ることになったわけですが、実際にバイオマス燃料の暖かさに触れられる場所は意外と身近にあるのです。
それではピックアップしてご紹介しましょう。
ペレットストーブのあるカフェ「奥美濃プロデュース」【岐阜県郡上市】
ペレットストーブの魅力はやはり体験してみないとわからないというのが本音です。
岐阜県郡上市にはペレットストーブの展示場を兼ねたカフェ・奥美濃プロデュースがあります。
奥美濃プロデュースの経営理念は「大いなる自然に感謝し、環境改善に努め、パイオニアを目指して、製品の品質の向上」。
本社のある郡上市白鳥町は冬は雪深く暖房器具が欠かせません。ペレットストーブの暖かさに触れながら美味しい食事ができる、そんな幸せで心地よい時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
おうちで作ってみよう!身近なものでバイオマス燃料
バイオマス燃料は事業所や発電所じゃないと作れないの?
いえいえ、そんなことはありません。
私たち祖先がバイオマス燃料で生活をしていたように、私たちもバイオマス燃料を手作りすることができるのです。
火を使うため、お子さまは必ず大人の方と一緒に挑戦してみてくださいね。夏休みの自由研究にもおすすめです。
まるでアート!花炭づくり
花や木の実、小さな野菜などをじっくり焼くと、そのままの形を保った状態の炭ができます。
見た目そのものはまるでアート、飾るもよし、バイオマス燃料として使うもよし、アウトドアの際に炭切れしたときにも知識として知っておくのもいいでしょう。
森で拾ってきたまつぼっくりで簡単に作れてしまうので、お子さまと一緒に楽しむこともできますね。
【炭となる材料】
・花びらの大きな花
・大きな葉
・枝
・木の実
【道具】
・ふたのある空き缶(アルミ缶を除く)
・空き缶に穴をあけるキリや釘
・耐熱性軍手
・カセットコンロ、キャンプなら焚き火、空き缶を置く金網
※煙が出るため、屋内で行うことをおすすめします。
【作り方】
- 空き缶の蓋部分に釘やキリを使って5、6箇所穴をあけます。
蓋がない場合はアルミホイルを何枚かをふんわり掛けるようにかぶせましょう。 - 空き缶の内部に炭となる材料を重ならないように並べます。
崩れてしまうことを防ぐためぎゅうぎゅうにならないようにしましょう。 - 材料を並べ終えたら蓋をし、火にかけます。
- 20分ほど経つともくもく煙が出てきます。
完成の目安としては火力や素材によりますが、水分の少ない木の実や葉は20分から30分で完成。水分の多いものは50分ほどで完成します。 - 煙が落ち着くと完成の合図です。
耐熱グローブを用いて火からおろし、缶が冷めるまで放置します。(熱いまま開けると酸素と結合し、発火の恐れがあるため必ず冷め切ってから蓋をあけます) - 冷めたら蓋をあけます。
真っ黒に黒光りした花炭ができているでしょう。
このようにバイオマス燃料は身近な植物で作ることができます。
ぜひアウトドアライフの中にアクティビティとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
私も自然の中で過ごすことが大好きなので、この夏のキャンピングライフに取り入れてみます。
バイオ燃料・バイオマス燃料に関するよくある質問
バイオ燃料・バイオマス燃料に関するよくある質問を紹介します。
車で使えるバイオ燃料の種類は?
車で利用できる主なバイオ燃料には、バイオエタノールとバイオディーゼルがあります。バイオエタノールはガソリン車に、バイオディーゼルはディーゼル車に利用されます。
日本では、ガソリンにバイオエタノールを混合した「ETBE混合ガソリン」や、廃食油などから作られるバイオディーゼル燃料が導入されています。
バイオ燃料とバイオマス燃料の違いは何?
バイオ燃料は、バイオマス(動植物など生物由来の資源)を原料として作られる燃料の総称です。
バイオマス燃料は、その中でも特にバイオマスを直接燃焼させたり、加工して得られる燃料を指します。
たとえば、木材や木質ペレット、廃食用油から作るバイオディーゼル、トウモロコシやサトウキビから作るバイオエタノールなどが含まれます。
つまり、バイオマス燃料はバイオ燃料の一種であり、両者は密接に関連していますが、バイオ燃料の方がより広い概念です。
バイオ燃料はどのような分野で使われている?
バイオ燃料は、発電所での電力供給、自動車やバスなどの車両燃料、産業用ボイラーや暖房など、幅広い分野で活用されています。
特にバイオエタノールはガソリン車の燃料として、バイオディーゼルはディーゼル車や一部の船舶燃料として利用が進んでいます。
また、木質ペレットなどの固体燃料は発電や暖房用として国内外で導入が拡大しています。
バイオ燃料とSDGsの関係性

ここまで見てきたような特徴やメリット以外にも、バイオマス燃料の注目が高まっている背景には近年耳にするようになった「SDGs」があります。
SDGsとは、持続可能な環境、社会、経済に関する17の目標と、それを達成する169のターゲットで構成された国連が定めた取り組みです。
17の目標のうち、バイオマス燃料はSDGs1とSDGs7に関わってきます。
SDGs目標1「貧困をなくそう」石油依存と貧困から脱出したオーストリアのバイオマス産業
一見なんの関係もないように思えるバイオマスと貧困ですが、実際にオーストリア最貧地域ブルゲンランド州でバイオマスが貧しさからの脱出をもたらしたと報告されています。(※2)
ブルゲンランド州では当時仕事先が少なく、みな都市部へ移住し残された人たちは貧しくなる一方でした。石油に頼っていたという状況もあり、なんとかこの状況を脱しようと目を向けたのが、州の多くを占める広大な森林を活用したバイオマス産業でした。
その後バイオマス生産が普及しはじめ、州の失業率が10年で半減したのです。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」バイオマスが人と地球にもたらす恩恵
バイオマス燃料は待機中の二酸化炭素量を増やさないため、地球環境に優しい燃料です。
また、貧困を救ったオーストリアの話のように、エネルギーを自給することで雇用が増え、地域が元気になり、みんなにエネルギーを届けることができます。
このように、バイオマス燃料とSDGsは密接な関係を持っており、今後さらに取り組みが加速していくことが予想されます。
まとめ
バイオマス燃料含む自然エネルギーは何種類かあり、それぞれ利点や欠点があります。
バイオマス燃料の利点は、
- くりかえし使えてなくならないこと
- 地球環境にやさしいこと
- 天候に左右されないこと
が挙げられますが、人間が利用するすべてのエネルギーをバイオマス燃料に置き換えることは現時点では間に合いません。
重要なのは、再生可能エネルギーの組み合わせと、省エネ対策です。
ひとりひとりがエネルギーの無駄遣いを減らすことで、再生可能エネルギーに徐々にシフトすることができ、結果的に持続可能なエネルギー消費が可能になります。
みんなが安心して暮らせるようエネルギーバランスを考えていきましょう。
参考文献
※1 岐阜県産業技術センター研究報告「木質バイオマス蒸留液を用いた防菌・防藻製品の開発(第3報)」
※2 国立環境研究所「森の小径で出会う人とエネルギー:オーストリアですすむ低炭素化」
※3 日本木質バイオマスエネルギー協会「バイオマス発電の普及状況」
この記事を書いた人

スペースシップアース編集部 ライター
スペースシップアース編集部です!
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