
スウェーデンは環境先進国や福祉国家と呼ばれて久しい国です。スウェーデンに興味のある方ならば、自然やデザイン大国と呼ばれる以外にも、環境活動家のグレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)の名や、脱炭素問題など、環境問題について耳にしたことがあるのではないでしょうか。
スウェーデンは先進国の中でも、SDGs達成率の高い国のひとつです。スウェーデンのSDGs達成率の高さには、いったいどのような理由があるのでしょうか。
また、スウェーデンが今後おこなうべき課題や取り組みには、どのようなことが考えられるでしょうか。実際にスウェーデンに暮らして感じることを、世間で知られているよい面だけではなく、多方面から考えてみていきましょう。
目次
SDGsとは?スウェーデンのランキングも紹介
近年耳にする機会の多くなった、SDGsというワード。Sustainable Development Goals(サステイナブル・デベロップメント・ゴールズ)の略です。これは国連で定められた、持続可能な社会を目指す指標で、17個の異なる項目が掲げられています。
たとえば、地球環境や気候変動に関して、ジェンダーの平等に関して、貧困やゼロハンガー、健康と福祉など、環境だけではなく教育や人権、社会や働き方に関しての項目もあります。
この中でも日本は、とくにジェンダーイクオリティやカーボンニュートラルなどを含む、6項目(具体的には項目番号5.12.13.14.15.17)について大きな課題が指摘されているのは、耳の痛い話でしょう。
SDGs達成度ランキングとは?
毎年、国連の研究組織(SDSN/持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)により、SDGsの目標が各国でどれくらい達成されているか、ランキング形式で発表されます。
基本的に世界193か国(2015年時の国連加盟国)が取り組んでいる努力目標ですが、達成度はポイント制で国ごと、地域ごとに表されます。これは、2030年までに達成したい目標として、各国が取り組むべき課題だからです。
2030年までを目標にしていますが、もちろん2030年を迎えたら、終了というわけではありません。先の世界的感染症のパンデミックにはじまり、長引く戦争の影響を受けての飢餓の増大・経済の混乱、回収できない海洋プラスチック汚染の増加、貧困問題など、2030年を迎えても解決されていない問題はきっと世界中にあるでしょう。
また、2030年までに達成できなかった場合にも、罰則や法的処置がとられることもありません。
2030年を目標に、各国や企業、個人が現状打破のために最大限の努力をし、その結果を受けて2030年以降も引き続き、世界中で地球環境について考えていくことが大切になっていくのです。
スウェーデンは2022年度世界ランキング第3位の国
2020年にSDGs世界ランキング1位だったスウェーデン。2022年には、ほかの北欧諸国の台頭もあり、世界第3位(85.2ポイント)にランキングしています。
実際に、ランキング上位はすべて北欧の国々に占められています。また、上位国にヨーロッパの国々が名を連ねているのは見逃せません。
対して日本は前年からダウンし、2022年の世界ランキングは19位となっています。
スウェーデン以外の北欧諸国のSDGs達成度
1位フィンランド(86.5ポイント)(2021年度1位→)
2位デンマーク(85,ポイント)(2021年度3位↑)
3位スウェーデン(85.2ポイント) (2021年度2位↓)
4位ノルウェー(82.3ポイント) (2021年度7位↑)
「暮らしやすい国ランキング」や「幸福度ランキング」では、常に上位に名前があがる北欧の国々。SDGs達成目標には、人権や働き方、貧困や教育問題の項目もあります。スウェーデンのSDGsの達成率の高さは、住みやすさや幸福度にも密接に関係しています。SDGs反対国の主張もある!
世界には先進国もあり、発展途上国もあります。SDGsは持続可能な目標なため、先の感染症パンデミックや、今も世界の各地で続く戦争や紛争などの混乱があると、SDGsの取り組みや達成度には、どうしても国ごとに温度差が出てきてしまいます。
SDGsは先進国にリードされており、おもに先進国での達成率も高くなっているため、途上国の経済成長の後押しをしないと主張する人もいます。なぜなら現在の先進国の多くは、自国の経済成長のために、多くの環境破壊や、人権無視をしてきたうえに成り立っているからです。
また、SDGsの項目の中には、実現すると矛盾が生じてしまう項目があるのも事実です。たとえば、すべての人間の健康と福祉を考えて(項目3.)タバコを禁止すると、タバコ農家で生計を立てている人たちの生活を脅かすことになります。(項目8.働きがいと経済成長)
海の豊かさ(項目14)や陸の豊かさ(項目15)を守るというのもやはり、漁業や林業を収入源としている人々の生活を圧迫すると考える人もいます。
しかしながら、SDGsはそのような極論を唱えているわけではありません。すべての産業を規制するとは誰もいっておらず、動植物の乱獲をせずにうまく調整をし、計画的に地球規模で持続性を考えていくという取り組みなのです。
これは一国間のみの経済事情で解決できる問題ではありません。地球規模で各国が互いに協力しあい、実現していく大きな課題です。ですから、スウェーデンなどの北欧諸国の国々は、「自分たちは目標達成しているから大丈夫」などと、のんびりあぐらをかいているわけにはかないというわけです。
北欧諸国のSDGs達成度が高い理由
世界でも税金が高く、それゆえに福祉国家と言われるスウェーデンは、(住んでみると医療制度には多々問題を感じますが)SDGs3「すべての人に健康と福祉を」をクリアしているといえます。
SDGs達成率の高い先進国のなかには、そもそもスウェーデンのように、もともと水資源が豊富(安全な水とトイレ・項目6)な国であったり、飢餓や貧困が少ない(項目1と2)国が多いのも事実です。
これらの恵まれた自然環境や、近代に定められた制度は、北欧の国々でSDGsの達成率が高い理由のひとつにもなっています。
ほかにも、スウェーデンがSDGsの達成度の高い理由として考えられる事柄を、さまざまな角度から探してみましょう。
早い段階からの取り組み
出典:Spaceship Earth
スウェーデンが環境問題に危機感をもち、問題解決に向けて取り組み始めたのは、実際に1960~1970年代初頭のことで、日本と比べてもかなり早い段階です。
水質資源の豊富なスウェーデンは、酸性雨が問題視されたときに、河川の酸性化で魚が被害を受けたり、土壌汚染が問題になったりしました。化石燃料による被害を軽減させるため、バイオエネルギーの研究開発がはじめられたのも、同じころです。
森林資源も豊かで自然の多い国と言うことや、極地に近い地理上の条件などもあり、気候変動への取り組みが身近なこととして受け止められたと考えられます。
1980年代初めには、空き缶や空きビン、ペットボトルなどのプラスチック類のリサイクルの仕組みが、民間レベルで整えられました。
どの国よりも先駆けで対策を取ったために、現時点での達成率が、世界でも群を抜いてトップになっているのです。
教育環境の良さ
スウェーデンをはじめとした北欧諸国は、軒なべて教育水準が高いことで知られています。
私立の学校を除けば、大学まで進んでも教育費がかからないので、いつでも好きなときに学業にうち込めます。また、社会人になったあとでも働きながら学校へ行ったり、新しい資格やスキル、キャリアを積むために大学へ戻ったりする人もたくさんいます。
転職のためにまず大学へ入り直し、新たな専門知識をつける人や、文系から理系に転向し、新しい仕事を探す人もいます。学びや教育の自由度は、どの国よりも高いでしょう。自分の専門がひとつというわけではありません。
高校生になる16歳からは、Studiebidrag(ストゥディエビドラグ)といって、CSN(Centrala Studiestödsnämnden)という組織から、毎月給付金が支給されます。学校への80%出席率が条件ではありますが、自宅から通う高校生の場合、月に1250kr(約15,900円)です。
大学生になると、自宅通学とアパート暮らしで金額も変わり、返済型の給付金の申請も可能です。また、海外留学をする場合にも支給されます。
これは私たちのように、外国からの移民がスウェーデンの学校に通う場合にも同様です。つまりスウェーデンでは、誰にでも平等に教育を受ける機会があります。その気になれば、何歳になっても大学に戻り、新しいことを勉強できるのです。
スウェーデンでは、日本のように「学費が高いから進学をあきらめる」必要も、「母(父)子家庭だから進学が困難」なこともありません。税金の高いことでも有名なスウェーデンですが、このように目に見える形で還元されているので、払い惜しむ気持ちはなくなりますね。
教育環境とは、決してよい大学で勉強をしたり、有名な教授のもとについたりすることだけではありません。スウェーデンでは国を挙げて、教育を受ける権利のバックアップがされているので、安心して学業に打ち込めるといえます。(SDGs項目4、全員への質の良い教育の達成)
小学生からSDGsについて学習
出典:Spaceship Earth
スウェーデンではSDGsの17項目について、小学生のころから学校の授業で教えられています。
たとえば、貧困問題についてのビデオを見たり、教育について考えたりする機会があります。ジェンダー問題に関しても、小学生のころから習いますし、異なるジェンダーの先生方の話を聞いたり、ディスカッションをしたりします。
環境問題に関しては、グループワークで調べたり、実際に浄水場の社会見学へ行き、川の水に入ってみたり、周辺地域のゴミ拾いをしたりします。
ごみの分別に関しても、家庭や地域で当たり前のように徹底しているため、日ごろの習慣になっています。
SDGsについて机上で学ぶだけでなく、グループワークやディスカッションを通じて、パネル制作やエキシビションを定期的に行い、親や他学年の子供たちが展示を見に訪れる機会も多くあります。
教育によって「現在世界で起こっていること」や「自分たちと異なる生活レベルの国があること」、「地球環境をよりよくするためにできること」を幼いうちから学びます。学習や体験によってくり返し学び、身につけることは、今ある問題に関心を持つ意味でも重要です。
徹底した個人主義
日本語で「個人主義」と表現すると、日本人の考える「和を以て貴しとなす」の精神に反した、”協調性のない人たち”と言うような印象を受けるかも知れません。しかしながら、北欧人の性質としてよく表現される「個人主義」というのは、それとはかなり違った感覚です。
あえて表現をするのならば、「自己肯定感の高さ」という表現がしっくりくるでしょうか。基本的にスウェーデンの人たち(北欧の人々含む)は、自己主張がきちんとでき、相手の意見を受け入れる懐の深さがあります。「人は全員違う」ことをよく分かっているからです。
自己肯定感が高く(自分で自分を認めている)、他人との違いも理解していると「人は人」と考えられるようになります。つまり実際に、他人のしていることがほとんど気にならないのです。
スウェーデンでは「他人に無関心」というよりは、「他人のしていることを尊重しているので、人に迷惑を掛けない限りは誰が何をしていても気にならない」という意味で、個人主義といえます。住んでみると感じますが、非常に暮らしやすいものです。
また、スウェーデンでは、幼いころから感情のコントロールが大切と教えられます。たとえば、公園で大声で騒いでいる子供たちが、母親や祖父母に怒られるという光景を目にすることがあります。日本人の目には、子供が公園で大きな声をあげて楽しんでいるのは、普通の光景ですが、スウェーデンではよくないとされる場面のひとつです。
このようなバックグラウンドあっての「個人主義」なため、ジェンダーの平等やLGBTなどのセクシャルマイノリティに対しても寛容です。
身近なところでは、子供たちの通う学校には、かなりの確率でLGBTの教員が在籍しています。学童でも多く働いていますので、子供たちは常に自然なかたちで、あらゆるジェンダーの大人と過ごすことになります。
大人が他人の親を目にする最も多い機会のひとつとして、毎日各家庭の親たちの出入りのある保育園を例に出しますが、保育園に行けば、「母親ふたりの家庭」や「父親ふたりの家庭」も普通に目にします。スウェーデンでは同棲結婚はもちろんのこと、養子縁組で子供を持つのも可能です。
誰も隠さないので、めずらしくないというのもありますが、正直「誰も気にしていない」という表現がぴったりです。これは、SDGsの5番目の項目にある、ジェンダーの平等に貢献しています。
世界の幸福度ランキング2025
- フィンランド(8年連続首位)
- デンマーク
- アイスランド
- スウェーデン
- イスラエル
2025年の世界幸福度ランキングでは、北欧諸国が引き続き上位を独占しました。特にフィンランドは8年連続で1位を維持し、社会的支援の充実、腐敗の少なさ、自由度の高さが高評価につながっています。
デンマークやアイスランドも、安定した福祉制度とコミュニティの結束力が幸福度を支えています。スウェーデンは環境先進国としての政策や平等な社会制度が評価され、4位にランクイン。
5位のイスラエルは社会的絆や生活満足度が高く、政治的課題を抱えながらも幸福度を維持しています。
世界の幸福度ランキング最下位の国
2025年の世界幸福度ランキングで最下位となったのはアフガニスタンです。調査では、紛争や政情不安、経済の停滞、生活基盤の脆弱さが幸福度の低さに大きく影響していると分析されています。
長年続く戦闘や治安の悪化により、多くの国民が安定した住居や教育、医療へのアクセスを失っています。また、女性や子どもの権利が制限され、社会参加や職業の機会が著しく限られていることも、人生の満足度や自由度を低下させる要因です。
さらに、国際的な経済制裁や支援の制約によって、日常生活に必要な物資やサービスが不足し、将来への希望を持ちにくい状況が続いています。こうした複合的な課題が重なり、主観的幸福感と客観的指標の双方で低評価となり、世界ランキング最下位という結果につながっています。
アジアの幸福度ランキング
2025年の世界幸福度ランキングにおけるアジア地域は、国ごとに大きな差が見られます。最も順位が高いのはイスラエル(世界5位)で、強い社会的つながりと高い生活満足度が評価されています。続いてシンガポールやアラブ首長国連邦が上位に入り、経済的安定や公共サービスの充実が幸福度を支えています。
一方、日本は55位と中位に位置し、治安や健康寿命は高評価ながら、主観的幸福感や社会的支援の指標がやや低い傾向があります。韓国も同様に中位で、経済力は高いもののストレスや長時間労働が課題です。東南アジアではフィリピンやタイが比較的高順位で、家族や地域の結束の強さが要因とされています。
一方、アフガニスタンやシリアなど紛争地域は最下位付近に位置し、政治的・社会的安定の欠如が幸福度を大きく下げています。
幸福度とは
幸福度とは、人々が自分の生活にどれだけ満足し、充実感や安心感を感じているかを総合的に示す概念です。国際的には「世界幸福度ランキング(World Happiness Report)」が有名で、所得や社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由、寛容さ、腐敗の少なさなど複数の指標を基に評価されます。
単に経済的に豊かであることだけでなく、社会的つながりの強さや信頼感、安心して暮らせる環境の有無も重要な要素です。また、個人の主観的な幸福感と、統計的データによる客観的評価の両面から測定されるため、文化や価値観の違いによっても順位が変わります。つまり幸福度とは、物質的豊かさと精神的充足、社会環境のバランスを反映する指標といえます。
スウェーデンのSDGsについて今後の課題やアプローチ
スウェーデンがSDGs達成率が高いのは、もともとの恵まれた資源や、先進国というベースあってのことです。しかしながら、現実のスウェーデンのエネルギー消費率はアメリカ同様に世界でも高いのは、先進国たるゆえんです。
世界の全ての国々が、スウェーデンと同レベルのエネルギー消費をした場合、今後どうなるでしょうか。当然ながら、世界のエネルギー源は短期間で枯渇してしまうでしょう。
この考察にはカラクリがあります。エネルギー問題に特化して考えた場合、エネルギー消費率自体が非常に高いスウェーデンですが、再生可能エネルギー率も高いため、エネルギーに関するSDGs項目は相殺という形で達成されているのです。
SDGs各項目の達成に関し、スウェーデンに課せられた今後の課題や、対策についても考えてみましょう。
▶︎関連記事:「スウェーデンは再生可能エネルギー先進国!身近なクリーンエネルギーの課題」
コロナ後のクリーンなエネルギー回復について
環境問題を考えるに当たって、2019年から続いた世界的な感染症のパンデミックが、スウェーデンに与えた影響は考慮する必要があります。
このパンデミック期間中、実はスウェーデンではストックホルムの一部を除いて、大規模なロックダウンや隔離政策などは、ほとんど行われませんでした。
暮らしに大きな変化が起きないというのは、スウェーデンに暮らすものとしてはある意味、ありがたいことでした。
もちろん学校や仕事がリモートワークになったり、レストランやカフェでの営業方法や時間が、一時的に変更になったりすることはありました。また、ショッピングモールでの店内入場制限や、消毒の徹底など、変化した部分もありましたが、平常に戻るのも早いものでした。
このパンデミックの間に、世界のエネルギー需要量は約8%落ち込みました。しかしながら、これによって大気汚染が回復するなど、環境にプラスに働いた事実は見逃せません。
2015年パリ協定で定められた、2030年までの「温室効果ガス削減目標」である1.5度以下に抑えるためには、1年間にこのパンデミック時と同じだけのエネルギーの削減をする必要があります。
今後10年間を、同じように削減し続けて初めて、パリ協定の努力目標が達成できるといえるのです。(SDGs11.持続可能な街づくり)
ここ20年で起こったスウェーデンの日常の変化
北欧の国々に長く暮らしていますが、実は人々の生活の中で、20年前と大きく変わったところがあります。
それは、スーパーマーケットやショッピングモールなどの営業時間です。
北欧で暮らし始めた1990年代は、スーパーですらも土曜は14時か15時まで、日曜日は完全に休業でした。そう、北欧の人々にとって「週末は家で休む」が当たり前だったのです。
当時週末にも営業をしている店は、駅のキオスクや、外国人の営業している食料品店など、個人経営の一部の店舗のみでした。当然ながら、24時間営業の店舗などは皆無です。
ところが現在では、クリスマス・イブですらショッピングモールは夕方まで営業しており、新年も当然のように午前中から開いています。もちろん通常に比べると短縮営業ではありますが、ほぼ全てのお店が営業をしています。
以前はスーパーすら閉まっているという現実を、不便だなと感じていました。しかし現在は逆に「あそこのモールはお正月から営業してるの!」と驚いてしまうこともあります。
ショッピングセンターが開いていれば、当然ながら買い物に出る人が出てきます。経済活動はまわりますが、エネルギー消費も増えますね。(SDGs7.8クリーンなエネルギー、働きがいと経済成長)
スウェーデンのように人口の少ない国で努力するより、もっと世界で多くのエネルギーを使用し、工場などを稼働させ、大気汚染の原因になっている国を取り締まった方がよいという意見もあります。
しかしながら、スウェーデンや日本のような、先進国に輸入されている多くの生活用品は、それらの国や途上国で安く生産され、輸出されているのが現実です。作る責任と使う責任を、今後どのように考えていくかは、大きな課題です。(SDGs12.つくる責任と使う責任)
だからこそ地球環境を守るのは、世界規模の問題であり、国と国・企業同士などが共同で取り組んでいく必要があるのです。(SDGs17.パートナーシップで目標を達成)
移民の多い多民族の国
スウェーデンは多くの移民を受け入れている国でもあります。先のシリアの紛争では、多くの移民の受け入れをしました。また、日本では「国際結婚」と呼ばれる婚姻も、広義では移民であり、世界中から大勢の外国人が結婚を機にスウェーデンへ移住しています。
ジェンダー問題に関して、スウェーデンは先進国と言われていますが、スウェーデンで暮らす全ての人が、同じ考えをもって生活しているわけではありません。
たとえば、欧米人など比較的ジェンダーを気にしない人もいれば、日本人のように郷に入ればの精神で容易に受け入れる人もいます。しかしながら、多くのイスラム系の移民のように、ジェンダー問題というものはそもそも「存在しない」ものの対象と考えている人も、たくさん暮らしています。
スウェーデンのように多くの移民の暮らす国では、すべての人々の考えかたを「スウェーデン風に」画一化できるわけではありません。また、移民世代・移民2世と3世の考え方には、当然ですが、世代間や育った国のバックグラウンドの違いから生まれるギャップもあります。
このように異なった文化的背景を持つ人々が、スウェーデンという国で、いかに互いを理解し、暮らしていくかも大きな課題です。(SDGs5.ジェンダーの平等の実現、10.人や国の不平等をなくす取り組み)
スウェーデンの幸福度に関するよくある質問
スウェーデンは世界幸福度ランキングで常に上位を維持し、高い税負担や厳しい自然環境にもかかわらず、国民の生活満足度が非常に高い国として知られています。その背景には、充実した福祉制度や平等な社会構造、信頼度の高い公共サービス、そして持続可能な環境政策があります。
ここでは、スウェーデンの幸福度に関してよくある質問に答えながら、その理由や課題を詳しく解説します。
日本と同じくらい税金が高いスウェーデンの幸福度が高い理由は?
スウェーデンは消費税(付加価値税)や所得税が高い国ですが、その税金が充実した公共サービスとして還元されている点が幸福度の高さにつながります。例えば、医療費や薬代には年間自己負担の上限があり、それを超える分は無料。保育料にも上限があり、所得に応じて軽減されます。
大学の授業料は原則無料で、奨学金制度も整備されています。さらに、食品や公共交通などには軽減税率を適用し、生活必需品の負担を抑えています。これにより高い税負担感があっても「見返りが大きい」という実感があり、国民の満足度と信頼感を高めています。
スウェーデンの消費税や所得税は実際どのくらい?
スウェーデンの消費税(付加価値税)は標準税率が25%で世界的にも高水準ですが、食品やレストランサービスは12%、書籍や公共交通は6%といった軽減税率を導入しています。所得税は国税と地方税の二重構造で、地方税は一律約32%、さらに高所得層には追加の国税が課されます。
ただし、課税額が高い分、医療や教育などの公共サービスが充実しており、税金が社会全体に還元されていることへの納得感が高いのが特徴です。累進課税制度により、低所得層の税負担は比較的軽く、高所得層が多く負担する仕組みが社会的平等を支えています。
公共サービスは日本とどう違う?
スウェーデンの公共サービスは、医療・教育・福祉の各分野で利用者の自己負担が非常に低く抑えられています。医療費や薬代には年間自己負担上限があり、超えると無料。保育料も所得に応じて上限が定められ、長時間保育も安価です。さらに、大学授業料は原則無料で、留学生を含む一部に奨学金や生活支援が用意されています。
これらは税金で賄われ、所得や住む地域に関わらず平等に利用できる仕組みです。日本でも一部補助はありますが、自己負担割合や所得による格差が残るため、全体としての公平性・負担軽減度はスウェーデンの方が高いといえます。
幸福度ランキングで評価される要素は?
世界幸福度ランキングでは、以下の6つの要素で評価されます。
- 一人あたりGDP
- 社会的支援
- 健康寿命
- 人生の選択の自由
- 寛容さ(寄付や助け合いの文化)
- 腐敗の少なさ
スウェーデンは社会的支援や自由度、腐敗の少なさで特に高得点を得ています。高福祉制度により困窮時にも安心して暮らせる環境があり、政府や自治体への信頼度も高く、日常生活のストレスが軽減されています。
また、環境政策の先進性も安心感を与え、精神的な充足度を後押ししています。これらの要素が総合的に作用し、高い幸福度ランキングを維持しています。
高福祉の副作用や課題は?
スウェーデンの高福祉モデルは成功例として注目されますが、副作用や課題も存在します。まず税負担が大きく、特に中所得層には可処分所得の圧迫感があります。また、医療や住宅における待機期間の長さが問題になることもあります。
都市部では住宅価格や家賃の高騰が進み、若年層や移民の生活基盤が不安定になりがちです。さらに、移民や難民の増加による社会統合の課題も顕在化しており、労働市場や教育システムへの影響が懸念されています。高い幸福度を持続するためには、こうした構造的課題に対応しつつ、制度の持続可能性を確保する必要があります。
スウェーデンの幸福度とSDGsの関係
スウェーデンは2025年の世界幸福度ランキングで4位、SDGs達成度ランキングでも常に世界上位を維持しており、両者には明確な関係があります。幸福度の主要指標には「社会的支援」「人生の自由度」「腐敗の少なさ」「健康寿命」などがあり、これらはSDGsの目標と強く重なります。
例えば、SDG3「すべての人に健康と福祉を」やSDG10「人や国の不平等をなくそう」は、高い福祉制度や平等な社会づくりに直結し、国民の生活満足度を高めています。また、SDG13「気候変動に具体的な対策を」など環境政策への積極的な取り組みは、安心して暮らせる持続可能な社会を築き、精神的な豊かさにも寄与します。
つまり、スウェーデンではSDGs達成度の高さが、国民の幸福度向上に不可欠な社会的・環境的基盤を支えているのです。
まとめ
日本で暮らしていると、おもにスウェーデンをはじめとする北欧諸国の「よい面」ばかりを見聞きする機会が多いのではないでしょうか。実際に住んでみると、スウェーデンの社会や制度の恩恵を受けありがたく感じる反面、日本と比べて住みにくく感じる面もあります。
スウェーデンに暮らしていると、「成熟した社会」という表現がぴったりだと思うことがあります。すべての社会的な取り組みや、環境を見据えた試み、人権に関する問題点は、人間が基本となっています。つまり、人々の考え方や社会が成熟をしない限り、SDGsに代表されるような広範囲にわたる社会的な取り組みは、達成不可能であるといえます。
それでは成熟した社会とは、どのような社会を指すのでしょうか。たとえば、他人を知ることや、違いを認め、平等意識を持つことです。社会や福祉制度が安定し、自由な選択肢が与えられることです。権利が正しく機能し、協調性や社会生活を保ちつつも、個人を表現できることです。
とくにヨーロッパのような地続きの国では、国境は有ってないようなものです。世界は小さくなり、地域差も狭まってきます。
自分たちに起きていることは、世界でも起きているという認識をあらたに、当事者意識を持って取り組むことが大切なのではないでしょうか。
※本文中にある給付金の月額および日本円換算は、2023年1月現在の現状および為替レートに基づいて換算されています。
合わせて読まれている記事
この記事を書いた人

スペースシップアース編集部 ライター
スペースシップアース編集部です!
スペースシップアース編集部です!