
ベジタリアンと聞くと「野菜しか食べない人」くらいの認識はあるものの、実践している理由までは知らない人が多いと思います。
実はベジタリアンの多くは、自身の食生活と暮らしのつながりを考え、環境や健康面に配慮しており、SDGsとも深い関わりを持ちます。
本記事では、ベジタリアンとは何か開設した上で、ヴィーガン・プラントベースの違いや歴史、ベジタリアンのメリット・デメリットなどを解説します。
気楽に始められるベジタリアン生活とベジタリアンレシピやおすすめのレストランも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
ベジタリアンとは?簡単に解説
ベジタリアン(Vegetarian)とは、日本語では「菜食主義」と訳され、野菜や穀物・海藻のような植物由来のものを中心に食べる人々の総称です。
ベジタリアンは、野菜を意味する「Vegetable」から派生した言葉と思われがちですが、Vegetarianの語源は、ラテン語の「Vegetus」です。Vegetusは「健全な・活発な」という意味合いを持つことから、ベジタリアンは「健康で生き生きとしている力強い人」ともいえます。
ベジタリアンが食べられないものとは?
ベジタリアンは動物性食品の摂取を制限しており、基本的に肉や魚を食べません。ただし、乳製品や卵の可否はベジタリアンの種類によって異なります。
例えば、ラクト・ベジタリアンは乳製品は食べられるものの卵は避け、オボ・ベジタリアンは卵は食べるが乳製品は口にしません。ヴィーガンはさらに厳格で、肉や魚だけでなく乳製品や卵、蜂蜜など動物由来の食品全般を避けます。
食生活のスタイルは人それぞれであり、宗教的な理由や健康志向、環境配慮など背景も多様です。そのため、食事に招待する際やレストランで注文する場合は、どの程度の制限があるかを事前に確認することが大切です。
ベジタリアンの寿命は長い?短い?
ベジタリアンの寿命に関しては、世界中で研究が進められており、一般的には平均寿命がやや長いとされています。
肉を多く摂取する食生活に比べ、野菜や果物、豆類、全粒穀物を中心にした食事は、心疾患や肥満、糖尿病のリスクを下げるといわれています。
また、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量が少ないため、血管や心臓への負担も軽減される傾向があります。ただし、極端な制限で栄養不足に陥ると、逆に健康リスクが高まる可能性もあります。
特にビタミンB12や鉄分、カルシウムなどは不足しやすいため、サプリメントや栄養強化食品で補うことが推奨されます。適切な栄養管理を行えば、ベジタリアンは健康的で長寿をサポートする食生活といえるでしょう。
ベジタリアンの種類|魚や卵、乳製品は食べられる?
ベジタリアン(Vegetarian)は「菜食主義」と訳されます。肉や魚類などの動物性の食品を避け、野菜や豆類、キノコ類などの植物性食品を食生活の中心にする人が該当するとされるのが一般的です。
しかし、「ベジタリアン」と一口に言ってもその食生活は一つではなく「乳製品や卵食べる」「動物性食品全般を避ける」など、食事の形態によって6つに分類されています。
- ラクト・オボベジタリアン
- ラクトベジタリアン
- オボベジタリアン
- プラントベース
- ヴィーガン(ピュア・ベジタリアン)
- ペスカタリアン
この章では6種類のベジタリアンについて解説します。
ラクト・オボベジタリアン
ラクト・オボベジタリアンは、肉や魚は避け、植物性食品・卵・乳製品を食べるベジタリアンです。ラテン語でラクトは「乳」、オボは「卵」を意味します。
ラクトベジタリアン
ラクトベジタリアンは、肉や魚、卵を避け、植物性食品・乳製品を食べるベジタリアンです。
オボベジタリアン
オボベジタリアンは、肉や魚、乳製品を避け、植物性食品、卵を食べるベジタリアンです。
プラントベース
プラントベースは、積極的に植物性を食べ、必ずしも動物性を避けるとは限らないベジタリアンです。
ヴィーガン(ピュア・ベジタリアン)
ヴィーガンは、乳製品や卵・蜂蜜を含む、動物性食品全般を避けるベジタリアンです。
ペスカタリアン
厳密に言うとベジタリアンではありませんが、肉のみを避け魚介類は口にする「ペスカタリアン(ペスコ・ベジタリアン)」といった人たちもいます。
このように、一口にベジタリアンといっても、さまざまな主義の人が存在しますが、特にプラントベースとヴィーガンの違いがピンとこない方もいると思うので、少し踏み込んで説明します。
ベジタリアンとヴィーガン・プラントベースの違い
ヴィーガンとプラントベースは、ベジタリアンの種類の中の1つです。「ヴィーガン」と「プラントベース」は、どちらも厳格な「菜食主義」というイメージ強くありますが、それぞれ考え方に明確な違いがあります。
1つずつ見ていきましょう。
ベジタリアンとヴィーガンの違い
ヴィーガン(Vegan)とは、動物由来のもの全般を口にしない主義の人を指します。ピュア・ベジタリアン(Pure Vegetarian)とも呼ばれ、ベジタリアンの一種です。
ヴィーガンはベジタリアンのなかでも「動物搾取をしない」という意識が強く、肉や魚はもちろん、乳製品・卵・蜂蜜も口にしません。また、食生活だけでなく、衣服や日用品でもウールや革製品・ファーを選ばない人もいます。
ここで「蜂蜜やウールは動物を殺しているわけじゃないのに、なぜ?」と思う人もいるでしょう。
これは、ヴィーガンの人たちの多くがもつ「動物に対して差別をしない」「動物搾取をしない」という考え方が関係しています。
蜂蜜は、ミツバチが幼虫や仲間のために、食料として集めているもの。ウールは、羊の身体を寒さから守るために生えているものです。また、卵・乳製品も、そもそもは鶏や牛が自分たちの命の存続・子孫を残すために作っているものです。
ヴィーガンの人々は、こうしたものを「動物から搾取しない」という考え方のもと、避けているのです。
ベジタリアンとプラントベースの違い
プラントベース(Pland-based)とは、全てまたは一部に植物性を取り入れた食生活のことで、自分と地球の健康に配慮するという考え方が根底にあります。
あくまでも「植物性食品を多く取り入れよう」とするものであって、必ずしも動物性食品を食べない、ということではありません。
現に、プラントベースを謳う食品の中には、卵や乳製品が含まれているものも多くあります。例えば大豆を使用した代替肉の場合、
- 原材料が全て植物由来である
- 原材料の一部や添加物に、動物由来が含まれている
の、2つのパターンに分かれており、必ずしもすべてを植物由来にしなければならないという訳ではないことがわかります。まとめると、
- ヴィーガン:主に「どんな生き物も差別をしない」という観点から、”動物性食品を避ける”
- プラントベース:主に「健康」「地球環境」の観点から、”積極的に植物性食品を摂る”
となります。
ベジタリアンの歴史
ここまでベジタリアンの概要について見てきました。次では、ベジタリアンの歴史について簡単にご紹介します。
世界では古くからあった「禁肉食」
古くから食生活は、宗教観と深く結びついています。
特にヒンドゥー教・仏教・ユダヤ教といった宗教には肉食を禁じる戒律があり、キリスト教が広まるまではアジアや欧州の一部で主流でした。
また古代ギリシャ時代では、有名な数学者・ピタゴラスが「動物は人間と同じように扱われるべきであり、肉食を避けるべきだ」とし、菜食を実践していました。
この逸話はヨーロッパで広く知れ渡り、ベジタリアンという言葉が生まれるまで、菜食主義者は「ピタゴリアン」と呼ばれていたほどです。
そして19世紀になると、キリスト教の中でも菜食を基準とする宗派が生まれ、欧米の一部でベジタリアンの動きが活発になっていきます。
近代ベジタリアンの運動
欧米において、肉や魚を食べない「ベジタリアン」という言葉が生まれたのは、1847年のイギリスだといわれています。
この時代のイギリスでは、人間と哺乳類・霊長類のような高等動物が神経学的に似ていることがわかってきました。そのため肉食=動物への残虐行為とする考え方が広まり、さらには医師によって「菜食が健康によい影響をもたらす」という類の研究報告が盛んになったことにより、ベジタリアンが広まっていったのです。
また、アメリカでも同じ時期に菜食運動の高まりが見られ、1850年にはベジタリアン協会を設立。その後、世界中に菜食運動が広まっていき、1908年には国際ベジタリアン連盟が結成されました。
20世紀に入ると世界大戦がはじまり、イギリスをはじめ多くの国では国民の自給食糧として、フルーツや野菜の摂取を奨励します。
戦後、現代のような大規模畜産業が盛んになると、カウンターカルチャーとして菜食主義運動が再び盛り上がるように。
主に政府や上流階級の間で常態化している文化に対し、市民・女性といった社会的弱者が対抗する運動のこと。
そして1970年代には「エシカル」や「アニマルウェルフェア」が、80年代以降は「環境への配慮」が菜食運動の中心テーマとなりました。
このように、世界では19世紀から現代にかけて、さまざまな考え方が加わりながら、ベジタリアン運動の波が高まってきたことがわかります。
では、日本ではどのようにベジタリアンが広まったのでしょうか。
日本人は、かつてみんなベジタリアンだった?
今でこそ日本では肉を食べる習慣が定着していますが、歴史的には肉食に関する制限・戒律が多く定められていました。そのため、ごく最近まで肉を食べることは当たり前ではありませんでした。
遡ること奈良時代、天武天皇が肉食を禁じる法律を制定して以来、表向きは「肉食はタブー」とされてきました。
また、禅宗の影響で植物由来の食材のみを使った精進料理が発達したり、農民の間では質素な玄米菜食が中心だったりと、日本の古くからの食事はほとんどベジタリアンに近かったといっても過言ではないでしょう。
(とはいえ実際は、漁業によって採取した魚をはじめ、主に狩猟で得たシカやイノシシのような獣肉を食べることはあったようです。)
この流れのまま明治時代まで牛肉を食べる習慣はほとんどなく、家畜肉が魚の消費量を上回ったのは1960年代の高度経済成長期からと言われています。
このように、日本におけるベジタリアン・肉食の歴史的な流れは、欧米とは逆行しているように見えます。しかし2010年代後半以降から、健康ブームの浸透や環境問題への懸念によって、再びベジタリアンを選択する人が増えています。
次では「なぜベジタリアンになるのか?」について見ていきましょう。
ベジタリアンになる理由や背景
ここでは、ベジタリアンになる理由や背景について詳しく解説します。
環境・気候変動
近年、特に若者の間で増加しているのは、地球環境や気候変動への危機を理由に、ベジタリアンになるケースです。
かつては多くの国や地域で、世帯で家畜を飼育したり、狩猟・漁業を行ったりと、本当に必要な場面でしか動物を食べる機会がありませんでした。
しかし今では、大規模な畜産業・養殖業が発展し、誰でも気軽に肉や魚を食べられるようになっています。
これにより、
- 大量の家畜を飼うことで生まれる有害ガス(二酸化炭素、メタンガスなど)
- 家畜用の飼料を育てるため森林の破壊・違法伐採が急増
- 家畜・養殖に使われる大量の農薬・化学肥料による環境汚染
- 食べきれずに大量の廃棄を生み出し、焼却時に二酸化炭素が発生
といった問題が発生するようになりました。
環境に関する教育を受ける中で「このままでは自分たちの未来が危ない」と感じた若者たちが、ベジタリアンやヴィーガンになる場合が多くあります。
特に、こうした教育を積極的に行っている欧米では、菜食になる人の増加率が急増しているそうです。
ベジタリアン人口の増加

上記の図は、大和総研の調査による1998~2018年での菜食人口増加率を表しています。
中南米を含むアメリカで3.9%、ヨーロッパでは2.6%の増加率を見せており、たった20年でこれだけ多くの人が、ベジタリアンを実践し始めているのです。
近年は、現代畜産業を批判する「DOMINION」や「OKUJA」のような映画も登場し、映像によって現実を知った若者が、ベジタリアン・ヴィーガンへ転向するパターンも増えてきました。
宗教
歴史の章でも触れたように、ベジタリアンと宗教観は深い関わりを持っています。
ヒンドゥー教をはじめ、仏教やユダヤ教・イスラム教の信者の多くは、今もほとんど肉食をせず、ベジタリアンに近い食生活を送っているのです。
World Atlasのデータ(2019年)によると、世界のベジタリアン人口は以下の通り。カッコ内の数字は、国の人口に対するベジタリアンの割合を示しています。
- 1位:インド(38%)
- 2位:イスラエル(13%)
- 3位:台湾(12%)
- 4位:イタリア(10%)
- 5位:オーストリア(9%)
ランキングでトップの国・インドは、地域によってさまざまな宗教を信仰しています。そのため、必然的に肉・魚を食べない生活をしている人が多くいると考えられます。
宗派によって理由はさまざまですが、対象の動物を神聖な存在として扱っているため、口にしてはならないケースが多くあります。
なお、直接宗教とは関係がありませんが、有名な作家・宮沢賢治が執筆した「ビジテリアン大祭」という本があります。これは、菜食主義への批判を、宗教になぞらえた作品です。
読みながら反対派・賛成派の議論への理解を深めることができるので、ぜひベジタリアンについて詳しく知りたい人におすすめします。
倫理観
続いては、倫理観(エシカル)からベジタリアンになる場合です。
倫理とは、人として守るべき道のこと。道徳やモラルと同義語で、正当な判断のもとに行動することを言います。
ベジタリアンになる人の中には「動物・魚を殺すことは倫理に反している」とし、口にしないケースがあります。他にも、狩りや釣りによって捕まえた動物を、自分の手で調理できないのであれば食べるべきでない、といった考え方の人もいます。
近年では魚介類も痛みを感じるという研究も
また近年は、これまで「痛みを感じない」とされていた魚介類も、痛みを感じ苦しみを味わうという研究がいくつも発表されています。
この結果を受けて、これまで肉だけを避けてきた人たちの中に「倫理的な理由で魚も食べない」という人も出てきました。
歴史の章で見たように、厳格なベジタリアンであったピタゴラスが「人間も動物も同胞であり、殺してまで食べるべきではない」としたのも、彼の倫理観から実践に繋がった例といえるでしょう。
もう1つの理由として、健康面を意識してベジタリアンを実践するケースもあります。これは、次で説明するメリットと関係しています。
ベジタリアンのメリット
ここでは、ベジタリアンを実践するメリットを見ていきましょう。
生活習慣病を予防できる
ベジタリアンの食生活は野菜や果物、豆類などを多く取り入れるため、自然とビタミン・ミネラル・食物繊維を豊富に摂取できます。
動物性脂肪やコレステロールの摂取が抑えられることで、肥満や高血圧、糖尿病、心疾患などの生活習慣病を予防できる点が大きな特徴です。さらに、食物繊維が腸内環境を整えることで免疫力の向上や便秘改善にも効果が期待できます。
近年の研究では、ベジタリアンの人は非ベジタリアンと比べてBMIが低い傾向にあることも報告されており、健康的な体型の維持にもつながると考えられています。
環境負荷を減らせる
ベジタリアンを選ぶことで、地球環境への負担を減らせます。畜産業は温室効果ガスの排出や水資源の大量消費、森林伐採など多くの環境問題に直結しています。
肉の消費を減らし、植物性食品を中心にすることで、CO₂排出量や資源消費を抑制できるのです。また、土地利用の効率化にもつながり、将来的な食料問題の緩和にも寄与します。
SDGsやサステナビリティの観点からも、ベジタリアンやフレキシタリアンの食生活は注目されており、日々の食選択が地球規模の課題解決につながるといえるでしょう。
動物の命を守れる
ベジタリアンの大きな意義の一つが、動物の命を守れることです。現代の畜産業では大量生産のために動物が過酷な環境で飼育されることも多く、倫理的な問題が指摘されています。
肉や一部の動物性食品を避けることで、そうした動物の犠牲を減らし、命を尊重するライフスタイルを実践できます。さらに、動物愛護の考え方に共感する人々と価値観を共有できる点も魅力です。
単なる健康志向の食事法にとどまらず、自分の信念や倫理観を食生活で表現できるのは、ベジタリアンならではのメリットだといえるでしょう。
ベジタリアンのデメリット
続いては、ベジタリアンのデメリットを確認しましょう。
栄養不足に陥るリスクがある
ベジタリアンは肉や魚を避けるため、動物性食品から摂取できるビタミンB12や鉄分、亜鉛、カルシウムなどが不足しやすくなります。
特にビタミンB12は神経や血液の健康に欠かせない栄養素であり、欠乏すると貧血や神経障害のリスクが高まります。また、植物性食品から摂れる鉄分は吸収率が低いため、鉄欠乏性貧血につながる可能性があります。
そのため、ベジタリアンを続ける場合は、サプリメントや栄養強化食品、バランスの取れた食事計画が不可欠です。栄養に関する知識を持たずに実践すると、かえって健康を損なうリスクがある点は大きなデメリットといえます。
外食や付き合いで選択肢が限られる
ベジタリアンの食生活は日本を含む多くの国でまだ一般的ではないため、外食時に食べられるメニューが少ないという課題があります。
特に肉や魚が前提となる料理が多い居酒屋や家庭料理では、サラダや副菜以外に選べるものが限られてしまうこともあります。
また、友人や同僚との会食では、自分の食のスタイルを理解してもらう必要があり、気を遣う場面も増えます。
選択肢の少なさは、食の楽しみを制限するだけでなく、付き合いや社交の場での負担になることもあるため、ベジタリアンを続ける上でのデメリットのひとつです。
食材や調理の工夫が必要になる
ベジタリアンの食事は、肉や魚を使わない分、栄養を補う工夫が求められます。たとえば、タンパク質を十分に摂るためには大豆製品や豆類、ナッツ類などを日常的に取り入れる必要があります。
また、味や満足感を出すには調味料や調理法の工夫も欠かせません。さらに、一般的なスーパーでは動物性原料を完全に避けた食品が手に入りにくい場合もあり、食材探しに手間やコストがかかることがあります。
こうした準備や工夫に時間と労力が必要になる点は、忙しい人にとってハードルとなりやすく、ベジタリアン生活を続けにくくするデメリットといえます。
ベジタリアンへの批判
ベジタリアンについては、「意味がない」「体に悪い」といったネガティブな捉え方をされることがあるのも事実です。詳しく見ていきましょう。
栄養不足になるという批判
ベジタリアンに対してよくある批判の一つが「必要な栄養素が不足するのではないか」というものです。特にタンパク質、鉄分、ビタミンB12、カルシウムなどは動物性食品に多く含まれているため、偏った食事をすると不足するリスクがあります。
しかし、豆類や大豆製品、ナッツ、全粒穀物、葉物野菜をバランスよく摂取すれば、多くの栄養は十分に補えます。また、サプリメントや強化食品を活用することで不足分を補う方法も一般的です。
重要なのは、正しい知識を持って食生活を設計することであり、批判に対しては「工夫次第で栄養は十分に摂れる」と伝えるのが適切です。
食の楽しみを失うという批判
「肉を食べないと食事の楽しみが減る」という声もあります。確かに肉料理はバリエーションが豊富で、味や食感を楽しめる存在です。
しかし、近年は大豆ミートや植物由来の代替肉が普及し、肉に近い味や食感を楽しめるレシピも増えています。また、野菜やスパイスを組み合わせた料理は彩り豊かで、栄養だけでなく視覚的にも満足感を与えます。
食文化の多様化により、ベジタリアン料理は世界的に注目を集めており、「制限」ではなく「新しい発見」として楽しめる点を強調することで批判への理解を深められます。
偏った思想だと批判される
ベジタリアンは時に「極端な思想」や「他人に押しつける考え方」と批判されることもあります。確かに動物愛護や環境保護といった強い信念から選択する人も多く、その価値観を周囲に積極的に発信することで誤解を招くケースがあります。
しかし本来、ベジタリアンは個人の自由なライフスタイルの一つであり、誰かに強制するものではありません。批判に対しては、自分の選択を静かに尊重してもらえるよう、押しつけずに実践する姿勢が重要です。
あくまで「自分の健康や価値観に合った選択」であると伝えることで、周囲からの理解を得やすくなります。
気楽に始められるベジタリアン生活とベジタリアンレシピ
ここからは、ベジタリアンを始めて3年以上経つ筆者が、気軽に実践するためのポイントをご紹介したいと思います。
筆者自身、はじめは何となく難しく感じていましたが、いざやってみると実は簡単。続けていると自然と習慣が身につき、身体も軽くなって快適な生活を送れるようになりました。
※そうはいっても、人によって体質は異なるもの。しばらく続けてみて「合わないな」と思ったら、無理せず中断し、お医者さんに相談してくださいね。
週に1回ベジタリアンにする日を作ってみよう
いきなり「完璧なベジタリアンになろう!」と気張ってしまうと、なかなか長続きしません。まずは無理なく、少しずつ肉食の頻度を減らしていきましょう。
そこでまずは、簡単なベジタリアンレシピを作ってみてはいかがでしょうか。例えば、
- きのこ入りのお好み焼き
- 豆たっぷりカレー
- 根菜のステーキ、きのこ餡ソースがけ
- 車麩の唐揚げ
- 野菜とキノコの天ぷら
- 野菜サラダ、ナッツたっぷりがけ
- ひよこ豆やレンズ豆入りのスープ
など。
ポイントは、野菜だけでなく豆や大豆製品・ナッツ類を組み合わせることです。お肉と食感が似ているキノコやお麩を入れることで、揚げ物や炒め物・煮物のような幅広い料理までカバーできるようになります。
出汁が必要な場合は、鰹節の代わりに昆布やしいたけを使うようにしましょう。工夫次第で、なんでも美味しくできてしまうのが、ベジタリアン料理の面白いところです。
ベジタリアンでも食べられるお肉「大豆ミート」も活用しよう
最初はどうしても、お肉の味が恋しくなることもあるでしょう。そのような時は、大豆ミートを使用するのがおすすめです。メーカーによって味付けや食感も異なるので、お気に入りの1品を見つけてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、写真は筆者がリトアニアでときどき食べていた、大豆ミートのシュニッツェル。見た目はまるで本物のお肉のようですが、立派なソイミートです。
最近の大豆ミートはクオリティが高く、まるで本物のお肉を食べているような感覚になるので、ベジタリアンでなくても、一度試してみる価値はありそうです。
ただし、製品によっては遺伝子組み換え大豆を使用している場合もあります。環境や健康面を考慮するのであれば「non-GMO(遺伝子組み換えでない)」という表示のついた大豆ミートを購入するようにしましょう。
日本では、裏面の原材料欄に「遺伝子組み換えでない」や「国産大豆」と表記のある商品であればOKです。ほかにも、JASなどの有機認証ラベルが付いている商品も遺伝子組み換え技術を使っていないので、ぜひ参考にしてみて下さい。
大豆ミートの他にも、豆腐や豆類・きのこといった、食べ応えのある食材を積極的に使えば、お肉がなくても満足できる料理が作れます。ぜひ試してみてくださいね。
【当事者アンケート】ベジタリアンになったきっかけは?
ベジタリアンとして生活をしている男女120名にベジタリアンになったきっかけやベジタリアン歴についてアンケート調査を行いました。
ベジタリアンになったきっかけ
40代を過ぎてなかなか痩せなくなってきたなと感じていました。
お肉が嫌いというわけではありませんでしたが、普段の生活を見直すことから始めた結果今ではベジタリアンになりました。お肉を食べることはありませんが、時々卵や魚は食べています。
ベジタリアンになってから少しずつ痩せてきてかれこれ2年ほど今の生活を続けています。
40代・女性 Spaceship Earth調べ
アメリカ人でベジタリアンの妻との結婚を機に妻に合わせて少しずつ今の食生活になってきました。
最初はできないかもしれないと思っていたけど、今となっては苦になることもありません。
1年弱基本的に動物性の食べ物は食べていませんが、体調が悪くなることはありません。
30代・女性 Spaceship Earth調べ
ペットを飼い始めたのをきっかけに、お肉を食べるのを避けるようになりました。牛乳などの乳製品をいただくことはありますが、どのように出荷されているかや飼育状況などを調べるようになりました。
30代・女性 Spaceship Earth調べ
このようにベジタリアンになったきかっけはさまざまですが、思い思いの食生活をしていることがわかります。
ベジタリアンになったきかっけで一番多かったのは、健康上の理由・ダイエット目的というものでした。食事を気にかけた生活をしていた結果、ベジタリアンになったという経緯でした。
ベジタリアンで困ることはない?
ベジタリアンな生活をしていると、外食シーンやお友達との食事会などで困ることもありそうですが、実際のところどうなのでしょうか?
特にありません。周りの友人なども理解をしてくれるので、野菜の美味しいお店などを探してくれることもあります。
今はベジタリアンの人が増えていることもあり、お店選びで悩むこともそんなにない気がします。
20代・女性 Spaceship Earth調べ
主人とお付き合いを始めた当初はベジタリアンだということを理解してもらえず、外食が難しかったので、家で自炊をすることが多かったです。
今となっては主人も健康を気にするようになり、休みの日に2人でオーガニックレストランに行くことが楽しみになっています。
50代・女性 Spaceship Earth調べ
このようにベジタリアンだからといって特に困ることはないようですが、周りがどれだけ理解してくれるかも重要です。
おすすめベジタリアンレストラン3選
自分で作るのは大変・・という人や、外食でもベジタリアン料理を楽しみたい人もいると思います。ここでは、主に関東のベジタリアン向けレストランを紹介します。
Rice Terrace Cafe(千葉県いすみ市)
千葉県の南部にあるいすみ市は、移住者に人気の町。そこで週末だけオープンしているのが、Rice Terrace Cafe(ライス・テラス・カフェ)です。
身体も心も喜ぶ、マクロビごはんとおやつ
このカフェは、Brown’s Fieldという、いわゆるエコヴィレッジのような場所にあります。オーナーの中島デコさんは、長年マクロビオティックの料理研究家として活躍。
カフェでは、毎週スタッフがメニューを考え、地元の食材を中心に、野菜や果物をふんだんに使用した、全品ベジタリアン対応の食事とスイーツを楽しめます。
田園風景を眺めながら、のんびりとくつろぎの時間を過ごせるのもうれしいポイントです。
根津の谷(東京都根津)
東京の谷根千エリアに佇む「根津の谷(ねづのや)」は、自然食品店に併設した菜食レストランです。
こぢんまりとしたお店ですが、厳選された食材を豊富に用意しています。
こだわりのマクロビごはん
根津の谷では、肉や魚がなくても満足できる食事づくりを心がけ、日替わりでランチを提供しています。
玄米菜食が中心の「マクロビオティック」を基本にし、出来るだけ国産・有機食材を使用したメニューが並んでいるのも特徴です。
アインソフ(東京都池袋ほか)

最後にご紹介するのは、池袋にあるヴィーガンレストランです。
洗練されたおしゃれな空間で、菜食料理を楽しむ
池袋の中心街から少し外れたところにあるアインソフ。全品ベジタリアン対応のため、肉・魚はもちろん、乳製品や卵も不使用です。
ソイミートを使ったハンバーガーやパスタ・プレートといった豊富なメニューが揃います。普段からお肉を食べる人と訪れても、みんなが満足できるレストランです。
また、本格的なスイーツが楽しめるパティスリーもあります。見事な味わいと食感に「これが全部植物食品からできているの?」と、きっと驚くはずですよ。
ベジタリアンの有名人
ここでは、日本や世界にいるベジタリアンの有名人について解説します。
日本のベジタリアン有名人
日本ではベジタリアンを公表している有名人は多くありませんが、女優やモデルの中には美容や健康のために肉を控えるライフスタイルを実践している人がいます。
例えば、女優の柴咲コウさんは環境問題への意識が高く、食生活でも動物性食品を減らす取り組みをしていると知られています。また、歌手のAIさんも動物愛護の観点からベジタリアンの食事を取り入れていると報じられました。
こうした著名人の発信は、ベジタリアンに対する関心を広め、一般の人にとっても身近な選択肢として捉えられるきっかけになっています。
日本におけるベジタリアン文化はまだ少数派ですが、有名人の影響力は大きく、今後さらに広まる可能性があります。
海外のベジタリアン有名人
海外ではベジタリアンやヴィーガンを実践する有名人が数多く存在します。ハリウッド女優のナタリー・ポートマンさんは幼少期からベジタリアンで、動物愛護や環境保護の立場からヴィーガンに移行したことでも有名です。
また、歌手のアリアナ・グランデさんも健康と動物愛護のためにヴィーガンを選んでおり、SNSを通じて積極的に発信しています。さらに、俳優のブラッド・ピットさんもベジタリアンであると報じられており、エシカルなライフスタイルを支持する姿勢が話題となっています。
海外では環境意識の高まりとともにベジタリアンを実践する著名人が多く、文化や社会的影響も大きいのが特徴です。
ベジタリアンに関するよくある質問
ここでは、ベジタリアンに関するよくある質問に回答します。
ベジタリアンでも卵は食べる?
ベジタリアンと一口に言っても、どの動物性食品を避けるかによって種類が分かれます。そのため「卵を食べるかどうか」はベジタリアンのタイプによって異なります。
例えば「オボ・ベジタリアン」は肉や魚は食べませんが卵は摂取します。一方で「ラクト・オボ・ベジタリアン」は乳製品と卵の両方を食べますが、肉や魚は避けます。逆に「ヴィーガン」は卵も含め、あらゆる動物性食品を口にしません。
卵を食べるベジタリアンは、タンパク質やビタミンB12などの栄養補給がしやすい点がメリットとされています。つまり、「ベジタリアン=卵を一切食べない」というわけではなく、どのスタイルを選ぶかによって答えが変わるのです。
ベジタリアンは寿命が長いって本当?
ベジタリアンは寿命が長いといわれることがありますが、これは一定の研究結果に基づいています。
野菜や果物、豆類を中心とした食生活は、肥満や心疾患、高血圧、糖尿病など生活習慣病のリスクを下げるとされており、結果的に平均寿命の延びにつながる可能性があるのです。
ただし「必ず長生きできる」というわけではなく、栄養バランスを欠いた偏った食生活を続ければ逆効果になる場合もあります。寿命を延ばす効果というより、病気の予防や健康維持に寄与しやすい食習慣と捉えるのが適切でしょう。
ベジタリアンでもプロテインは摂れる?
ベジタリアンでも工夫すれば十分にプロテイン(タンパク質)を摂取できます。肉や魚を食べなくても、大豆製品、豆類、レンズ豆、ひよこ豆、ナッツ類、全粒穀物などに良質なタンパク質が含まれています。
さらに、卵や乳製品を食べるタイプのベジタリアンであれば、卵やチーズ、ヨーグルトからも効率的に摂取できます。最近では植物由来のプロテインパウダーも市販されており、手軽に不足分を補うことも可能です。
大切なのは、さまざまな食材を組み合わせてアミノ酸のバランスを整えることであり、工夫次第で十分なタンパク質を確保できます。
ベジタリアンとSDGsの関係

ベジタリアンは、環境や健康面といった理由から実践する人が多いことを述べましたが、SDGsとも深い関わりを持っています。
では、一体どのような点で関係があるのでしょうか。
ベジタリアンとSDGsの関係は、以下のように示すことができます。
- 環境面への配慮:SDGs目標13〜15に関連
- 畜産・漁業に関わる労働者の人権への配慮:SDGs目標8、10に関連
- 食料の生産や廃棄:SDGs目標3、12に関連
- 健康面への配慮:SDGs目標3に関連
ベジタリアンの実践は基本的には個人の行動です。しかし、1人でも多くの人がベジタリアンに転向することで、大きな力となり、さまざまな課題の解決にもつながり、社会全体に大きな影響を与えることができるかもしれません。
>>それぞれの目標について詳しく知るにはこちらから
まとめ
海外ではすでにベジタリアンへの認識が浸透している中、日本でも少しずつ理解が進んできているように思います。
SDGsの達成期限が迫り、気候変動が深刻な今だからこそ、ひとりひとりが自身の食生活を向き合い、未来を見据えた行動が必要です。
人によって考え方は異なるものですが、ほかの生態系・環境を尊重でき、古くからの文化を継承する形であれば、どんな形でも解り合えるものがあるだろう、と筆者は信じています。
みなさんもあまり難しく考えず、まずは週1回のベジタリアン食から始めてみませんか。ぜひ本記事を参考にしてみてください。
参考文献
What is a Vegetarian | The Vegetarian Society
ベジタリアンとは|コトバンク
プラントベースとは?定義について徹底解説 ヴィーガンとの違いは? | FoodTechベンチャー| グリーンカルチャー株式会社
プラントベース食品関連情報 | 消費者庁
プラントベース食品って何?|消費者庁
Plant-based Definition & Meaning | Dictionary.com
World History of Vegentarianism | The Vegetarian Society
カウンターカルチャーとは| コトバンク
Countries With The Highest Rates Of Vegetarianism|WorldAtlas
倫理とは|コトバンク
魚の痛みと彼らの社会生活 魚利用の問題点|アニマルライツセンター
ベジタリアンは健康を損なうことはありませんか?|アニマルライツセンター
Eating more plant foods may lower heart disease risk in young adults, older women|ScienceDaily
The long-term health of vegetarians and vegans|PubMed
有機食品の検査認証制度|農林水産省
この記事を書いた人

のり ライター
東京生まれ&育ちのリトアニア在住ライター。森と畑に出会い「自然と人とが寄り添う暮らし方」を探求するように。現地で暮らし学んだ北欧の文化と植物、日本で体験したマクロビ&パーマカルチャーを糧に、食・暮らし関連を中心に執筆中。普段はほぼベジ。
東京生まれ&育ちのリトアニア在住ライター。森と畑に出会い「自然と人とが寄り添う暮らし方」を探求するように。現地で暮らし学んだ北欧の文化と植物、日本で体験したマクロビ&パーマカルチャーを糧に、食・暮らし関連を中心に執筆中。普段はほぼベジ。